フリーゲームプロデューサーのうきょうです。
先日、中国の法案についての記事を書きました。そこではその法案が施工されると日本に大きな影響を与えるだろうということも触れましたが、今回は過去実際に起きた事例をご紹介したいと思います。
実際、海外の1つの法案が日本のゲーム業界に与えることはよくある事例であり、結構死活問題だったりもするからです。ゲーム関係でお仕事をされる方や、プロデューサー関係の方はぜひ海外の情報も抑えておいていいのではと思います。
どちらかというと、オンラインとかアプリビジネスの方の影響が大きいかな。
韓国のシャットダウン規制法が敷かれた背景と、日本に与えた影響
・「シャットダウン規制法」2012年
16歳未満の子どもに対して、午前0時から午前6時までオンラインゲームの利用を規制された韓国の法案。
もとより韓国は日本と同じく小さい国でありますが、韓国は1997年からのアジア通貨危機で経済が大打撃を受けて経済が猛烈に悪化。当時の金大中政権がIT産業振興を経済再生の中核政策に掲げ、情報インフラ整備、ベンチャー企業の育成、パソコン普及などを積極的に展開しました。
結果として、通信、ゲーム、映画、音楽などのエンターテインメントも独自の産業が活性化。みなさんもよく知っているオンラインゲーム、ラグナロク、リネージュ、メイプルストーリーなど、今もサービスが継続しているアジアオンラインRPGの火付け役が数多く誕生しました。
その後も通信網やどんどん加速し、内政産業も活発化し、数多くのスタークリエイターやデザイナーも登場。グラフィックもハイクオリティで大規模につながり合うMMO(大規模で同時に接続し合う)タイプのサービス、リアルタイムで競い合うスポーツタイプのゲームも大流行しました。
しかしその一方で、多くプレイヤーがゲーム中毒になったり、ネットカフェ(PC房)で入り浸ってしまって、不眠不休でインターネットゲームをするあまり社会問題かも深刻化していきました。
しまいにはゲームのしすぎで死者が出るまでとなり、早急にゲームのプレイ規制に制限が入る流れになりました。
韓国はそもそもパッケージ文化ではないので、全てコンテンツがデジタル化されたものが主流です。ゆえにゲームもネットを媒介したサービスが主軸であったことと、国策も相まってインターネットに接続した状態で永遠に終わりのないサービスが良くも悪くも流行ることとなりました。
結果としてそれが国中を上げて人気になったことや新鮮さもあって、ユーザーへの依存度が極めて高くなり、規制が入ったという流れになったという背景がありました。
そしてこれは今は中国でも深刻な社会問題となり早々に規制が入ることは火を見るより明らかな状況であるというイメージですね。
むしろゲームの規制に関しては海外の方が厳しい。
当時日本が受けた影響
2004年頃、当時私がいたソフトバンクでは韓国のサービスを数多く取り入れたり、孫正義さんがCJグループを日本に展開するために発表会をやったときもありましたがその時はまだめちゃくちゃ羽振りがよい状態でした。
その頃の日本では「リネージュII」が大成功して、デスクトップPCがバカ売れ。韓国産のゲームでも「Redstone」「スペシャルフォース」「アラド戦記」「メイプルストーリー」「スカッとゴルフ! パンヤ」など、100万のアクティブユーザー数が出るタイトルがゴロゴロありました。
しかしながら、2012年前後からは規制が厳しくなりまくり、当時私が在籍していたNHNグループでも本社は韓国で(旧LINEとNHNの大元)、シャットダウン規制法によって本社の業績が急速に鈍化。本社での開発タイトルや韓国でも新規開発のタイトルが著しく減少しました。
影響その1
中小パブリッシャーが続々と倒産
規制の結果として、韓国の中小企業のパブリッシャーやデベロッパーも業績不振で倒産が相次ぎ、日本で販売、サービス展開するタイトルが急速に減少しました。いわゆる韓国から日本へローカライズされるタイトルの減少ということにダイレクトにつながったわけです。
影響その2
日本でのオンラインゲームのサービス開発が続々中止
中でもオンラインゲームは日本と韓国のプレイヤーの思考性は少し似ていて、特にグラフィック面での見た目の相性がとてもいいため、日本で開発したサービスを韓国に輸入することが結構ありました。
上にも書きましたが、その逆もしかりで、ラグナロクとか、リネージュ、リネージュII、メイプルストーリー、アラド戦記などは日本のゲームユーザーもすんなりと受けれやすいビジュアル、世界観が特徴的だったのではと思います。
そのため、日本で制作したオンラインゲームを韓国に投入することも想定していて開発を続けていたタイトルも、韓国のパブリッシャが業績が悪くなることや、中小のパブリッシャのお金周りが悪くなり、日本国内だけでは採算が取れないタイトルなどは開発中止になったタイトルが数多くありました。
今やゲームの開発費が高すぎる!
海外なくして黒字化が難しい
今となっては言うまでもないですが、日本のゲームメーカーはコンシューマ、アプリ開発会社も含めて海外の収益比率が多いのが当たり前になっています。
一昔前は海外のゲームを「洋ゲー」と揶揄し、日本では売れないと言われていたものが今はまったくの逆。むしろ海外ゲームの方が日本のユーザーにも受け入れられているし、日本のゲームメーカーも海外を意識したタイトル開発を重点的にしています。
その理由は、なんといってもゲームは莫大な開発費がかかるためですね。少しでも開発費を回収するために、ライセンスを海外に売ることを想定していますし、少しでも海外で売れるように微調整を繰り返していく。
結果、日本で作るよりも海外で作った方がいいんじゃないのか?なんて話もよくあることですね。
そんな開発背景の中で、より多くのユーザーに届けるためには海外のパブリッシャーの協力を含めて、海外販路の収束は日本の開発にも間違いなく影響を多々与えているということになります。
大規模タイトルの開発に限るとは思いますが
その他影響を与えそうな法律やルール
すでに大きな影響を与えているのは中国の輸入規制です。2019年4月にようやっと緩和されましたが、これは中国が自国の利益を守るために海外のゲームサービスを提供するためには厳重な審査が必要というルールです。
当時中国はネット上での規制は少しばかし甘く、海外タイトルが数多く侵入してきては多くの売り上げを出していたという背景がありました。これは中国のキャッシュが外に流れるのはいかんと、国がルール化。しっかりと審査すべきだということになりました。
実際このルールは日本のアプリメーカーを地獄に追い込みました。中国のサービスを見込んで準備したりキャッシュ計画を見込んでいた会社が倒産に追い込まれたりサービス中止になったものも多くありましたし、私が手掛けたタイトルも、契約までは決まりましたがサービスはまだしていないというものもあるぐらいです。
中国、審査再開後初めて海外ゲーム輸入を認可(中国) | ビジネス短信 – ジェトロwww.jetro.go.jp
ガチャもそのうち禁止になるだろう
今となってはガチャモデルはそこそこ海外でも受け入れられてはいますが、欧州の一部ではすでに禁止。
そもそも中国や韓国はギャンブル性のあるものは法律で禁止されていましたので今後、積極展開はしないはず(・・・今はなんか普通にやってるよね)
米国ですらrootboxというランダム型アイテム販売のビジネスモデルは受け入れられない文化だということで、法整備に漕ぎ着けるのも早い段階でなるのではと予測しています。
そうすると間違いなく日本のオンラインゲームデザイン、ビジネスモデルも変えざるを得なくなりますので、業界大変革がまた起きるということです。
これ以外でもGDRPという、欧州のプライバシー保護のルールはかなり厳重であり罰則も数千マンユーロという単位なので、海外サービスは戦々恐々と慎重に対応しているわけですが、このような海外のルールが日本のゲーム業界にも影響を与えると言うことは今後も増えていくのだろうと考えられます。
ゆえに今私たちは柔軟に対応できる考えと対策をしておく必要がありそうですし、新しいビジネスモデルやゲームとの付き合い方も考えておく必要があるのだろうということです。
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